チャーチモード
ざっくり説明
チャーチモード
がっつり説明
チャーチモードのスケールは7種類
チャーチモードは全部で7種類あります。
まずはその名称を知りましょう。
-
アイオニアンスケール(メジャースケール)
-
ドリアンスケール
-
フリジアンスケール
-
リディアンスケール
-
ミクソリディアンスケール
-
エオリアンスケール(ナチュラルマイナースケール)
-
ロクリアンスケール
他のスケールとは性質が異なる
チャーチモードは、ドリアンスケールやフリジアンスケールなどのように、「{スケール名}+スケール」で呼ばれますが、私たちが普段使っているスケールとは性質が異なります。
便宜上、音を順番に並べたものを呼ぶのに「スケール」という言葉を使っているだけで、実際の所はモード(旋法)です。
スケール(音階は)とモード(旋法)は混同されがちですが、それは誤解です。
まずは、スケール(音階)とモード(旋法)の違いについてを整理しておきましょう!
種類 |
説明 |
スケール(音階) |
基準音を元に、一定の法則に従って音の高低を順番に並べたもの。
|
モード(旋法) |
特定のスケールの音の並べ方。
|
このように、スケール内の基準音を変えて並べ直したスケールをモードといい、それらをまとめたものをチャーチモードといいます。
度数(元のスケールの基準となる音から何番目)にモードが対応している
前節で整理したように、 モードとは特定のスケールの音の並べ方のことであり、具体的には基準音を変えて並べ直したスケールのことを指します。
この項目では、基準音を変えて並べ直したスケール(モード)と、既に紹介したチャーチモードのスケールを紐付けしていきましょう。
Cメジャースケールを例に挙げます。
基準音 |
度数 |
スケール名 |
名称 |
ド |
一度 |
アイオニアンスケール |
Cアイオニアンスケール |
レ |
二度 |
ドリアンスケール |
Dドリアンスケール |
ミ |
三度 |
フリジアンスケール |
Eフリジアンスケール |
ファ |
四度 |
リディアンスケール |
Fリディアンスケール |
ソ |
五度 |
ミクソリディアンスケール |
Gミクソリディアンスケール |
ラ |
六度 |
エオリアンスケール |
Aエオリアンスケール |
シ |
七度 |
ロクリアンスケール |
Bロクリアンスケール |
表の『基準音』の項目は、並べ直した音の並びの、基準音を表しています。
Cメジャースケールは『ドレミファソラシ』の7音なので、ドからシまでの7通り考えられますね。
ドは、ドから始まりドに終わる音の並びを表しています。
レは、レから始まりレに終わる音の並びを表しています。
ミからシの項目も同様です。
表の『度数』の項目は、その音が何度(元のスケールの基準となる音から何番目)なのかを表しています。
Cメジャースケールの基準となる音はドなので、ドが1度(1番目)です。
レが2度(2番目)、ミが3度(3番目)と続き、シが7度(7番目)です。
この度数(元のスケールの基準となる音から何番目)によって、どのチャーチモードのスケールなのか決まります。
表の『スケール名』の項目は、度数に対応したチャーチモードのスケール名を表しています。
表の『スケール』の項目で表されているように、元のスケールの基準となる音から1度(1番目)はアイオニアンスケールです。
2度(2番目)はドリアンスケール、3度(3番目)はフリジアンスケールと続き、7度(7番目)はロクリアンスケールです。
表の『名称』の項目は、度数に対応したCメジャースケールにおける、チャーチモードのスケールの名称を表しています。
ドを基準にしたアイオニアンスケールなので、Cアイオニアンスケールです。
レを基準にしたドリアンスケールなので、Dドリアンスケール...といった具合です。
度数(元のスケールの基準となる音から何番目)によってチャーチモードのスケールが決まるという点は、どのメジャースケールにも当てはまる法則です。
確認の為に、Dメジャースケールを表にしたので確認してください!
基準音 |
度数 |
スケール名 |
名称 |
レ |
一度 |
アイオニアンスケール |
Dアイオニアンスケール |
ミ |
二度 |
ドリアンスケール |
Eドリアンスケール |
ファ# |
三度 |
フリジアンスケール |
F#フリジアンスケール |
ソ |
四度 |
リディアンスケール |
Gリディアンスケール |
ラ |
五度 |
ミクソリディアンスケール |
Aミクソリディアンスケール |
シ |
六度 |
エオリアンスケール |
Bエオリアンスケール |
ド# |
七度 |
ロクリアンスケール |
C#ロクリアンスケール |
スケールの音の間隔
続いて、7つあるスケールの音の間隔を見てみましょう!
(全てCメジャースケールを例に説明)
アイオニアン(メジャースケール)
音の間隔:『全音 全音 半音 全音 全音 全音 半音』
ドリアン
音の間隔:『全音 半音 全音 全音 全音 半音 全音』
フリジアン
音の間隔:『半音 全音 全音 全音 半音 全音 全音』
リディアン
音の間隔:『全音 全音 全音 半音 全音 全音 半音』
ミクソリディアン
音の間隔:『全音 全音 半音 全音 全音 半音 全音』
エオリアン(ナチュラルマイナースケール)
音の間隔:『全音 半音 全音 全音 半音 全音 全音』
ロクリアン
音の間隔:『半音 全音 全音 半音 全音 全音 全音』
音の間隔の法則
チャーチモードのスケールの音の間隔は、前項で確認していただいた通りです。
7つあるスケールは、それぞれ違った音の間隔で構成されています。
チャーチモードのスケールは7つで1セットですから、それぞれ違った音の間隔という点に、とっつきづらさを感じる方もいると思います。
しかしながら、チャーチモードの音の間隔の法則は、非常に単純な構造をしています。
具体的にいうと、メジャースケールの音の間隔『全音 全音 半音 全音 全音 全音 半音』を基準に、全音と半音の位置がずれているだけなのです!
メジャースケール(アイオニアンスケール)の音の間隔『全音 全音 半音 全音 全音 全音 半音』を円形に並べた画像です。
①の全音が、音の間隔の始まりである全音です。ぐるっと回って⑦が、音の間隔の終わりである半音です。
①〜⑦を順番に並べるとメジャースケール(アイオニアンスケール)の音の間隔『全音 全音 半音 全音 全音 全音 半音』になります。
ではドリアンスケールの音の間隔を見てみましょう。
ドリアンスケールの音の間隔は『全音 半音 全音 全音 全音 半音 全音』です。
上の画像でいいますと、②からぐるっと回って①までの音の間隔を並べたものです。
フリジアンスケールの音の間隔も見てみましょう。
フリジアンスケールの音の間隔は『半音 全音 全音 全音 半音 全音 全音』です。
上の画像でいいますと、③からぐるっと回って②までの音の間隔を並べたものです。
スケール名 |
番号 |
メジャースケール (アイオニアンスケール) |
①②③④⑤⑥⑦ |
ドリアンスケール |
②③④⑤⑥⑦① |
フリジアンスケール |
③④⑤⑥⑦①② |
上の表をみてください。
ドリアンスケール、フリジアンスケールそれぞれ、全音と半音の位置がずれていることが確認できると思います。
ドリアンスケールは、メジャースケールの②から音の間隔を並べ直したものなので、メジャースケールの番号の並びに比べて、番号が一つずつ左にずれます。
フリジアンスケールは、メジャースケールの③から音の間隔を並べ直したものなので、メジャースケールの番号の並びに比べて、番号が二つずつ左にずれます。
他のスケールの音の間隔も同様です。
メジャースケール(アイオニアンスケール)の音の間隔を基準に、全音、半音の位置がずれているだけです。
このように考えれば、すべてのスケールの音の間隔を覚えることなく、基準となるメジャースケールの音の間隔さえ覚えていれば、全て導き出すことができます。
導き出す際のポイントとしては、度数と音の間隔の順番を紐付けすることです。
音の間隔 |
度数 |
スケール名 |
①全音 |
一度 |
アイオニアン |
②全音 |
二度 |
ドリアン |
③半音 |
三度 |
フリジアン |
④全音 |
四度 |
リディアン |
⑤全音 |
五度 |
ミクソリディアン |
⑥全音 |
六度 |
エオリアン |
⑦半音 |
七度 |
ロクリアン |
チャーチモードのスケールは、元のスケール(メジャースケール)の度数に紐付けされています。
そのあたりの話は、度数(元のスケールの基準となる音から何番目)にモードが対応しているで触れましたね。
そこに音の間隔の法則も絡めて覚えてしまいましょう!
上の表をみてください。
例えばリディアンスケールをメジャースケールから導き出したかったとします。
この場合、リディアンスケールは4度に対応しているので、メジャースケールの4番目の音の間隔である全音(画像や表でいう所の④全音)から音を並べ直します。
ミクソリディアンスケールをメジャースケールから導き出したかったら、ミクソリディアンは5度に対応しているので、メジャースケールの5番目の音の間隔である全音(画像や表でいう所の⑤全音)から音を並べ直します。
他のスケールも同様のやり方で、メジャースケールからチャーチモードのスケールを導き出すことができます。
メジャー系とマイナー系
チャーチモードのスケールは、音の響きや実用的な面でメジャー系スケールとマイナー系スケールの2種類に分かれます。
メジャー/マイナー |
スケール名 |
メジャー系スケール |
|
マイナー系スケール |
|
まずメジャー、マイナーという言葉から説明します。
音楽においてメジャーは『明るいイメージ』、マイナーは『暗いイメージ』を意味します。
つまりメジャー系スケールは『明るいイメージの旋律』を意味し、マイナー系スケールは『暗いイメージの旋律』を意味しています。
従って、上の表はチャーチモードのスケールを、旋律が明るいものと、暗いもので分類した表といえます。
逆に言うと、旋律が明るいか暗いかで、メジャー系のスケールとマイナー系のスケールに分類されます。
ではどういう理屈で、スケールの明暗が決まるのか説明します。
ポイントは、スケールの基準音から数えて3番目の音までの距離が、半音いくつ分の距離なのかという点です!
メジャー系スケールはCアイオニアンスケールを、マイナー系スケールはDドリアンスケールを例に説明します。
Cアイオニアンスケールの構成音は『ドレミファソラシ』です。
Cアイオニアンスケールの基準音はドなので、ドから数えて3番目はミです。
よって、メジャー系かマイナー系かを判断する材料は、このミの音になります。
次に、スケールの基準音からミの音までの半音の数を数えましょう。
Cアイオニアンスケールの基準音はドなので、ドから順番に数えていきます。
上記の画像から分かるように、ミはドから数えて5番目となります。
よってドとミは半音5つ分の距離ということになります。
Dドリアンスケールの構成音は『レミファソラシド』です。
Dドリアンスケールの基準音はレなので、レから数えて3番目の音はファです。
よってメジャー系かマイナー系かを判断する材料は、このファの音になります。
次に、スケールの基準音からファの音までの半音の数を数えましょう。
Dドリアンスケールの基準音はレなので、レから順番に数えていきます。
上記の画像から分かるように、ファはレから数えて4番目となります。
よってレとファは半音4つ分の距離ということになります。
スケールの基準音から3番目の音までの距離が半音5個分の音の距離を長3度といい、スケールの基準音から3番目の音までの距離が半音4個分の音の距離を短3度といいます。
この長3度、短3度の違いがメジャー系とマイナー系に分かれる要因となっています。
つまり整理すると以下のようになります。
-
基準音から3番目の音までの距離が長3度:メジャー系のスケール
-
基準音から3番目の音までの距離が短3度:マイナー系のスケール
メジャー系スケールとマイナー系スケールは、音の響きで十分判別は可能かと思われます。
従って、この辺りの話は知らなくても問題はありませんが、一応知っておいて損はないでしょう!
メジャー系スケールとマイナー系スケールが分かれる実用的な面の話は、「コードに対するモード対応表」の項目にて後述します。
アドリブで再注目!
以降の項目から、チャーチモードの実用面について話をしていきます!
まずはチャーチモードの実用面における成り立ちについて整理しましょう。
チャーチモードは現在、一部の音楽理論上での説明に用いられたり、調整音楽的に特殊ともいえる曲作りや、演奏などに用いられています。
今でこそ、音楽理論の一部としてチャーチモードが扱われていますが、16世紀頃までは、このチャーチモードが西洋音楽の基礎とされる概念でした。
しかし、調整音楽(キー+メロディー+コード)という概念が確立されて以降、チャーチモードという概念は過去の遺物として扱われるようになります。
チャーチモードが再注目されるようになったは19世紀末頃で、キッカケはジャズのアドリブ演奏といわれています。
この『ジャズのアドリブ演奏』というキッカケが、後の実用面に大きく関わってきます。
まずは一般的なアドリブ演奏について軽くおさらいしましょう。
アドリブ演奏とは、コード進行(曲)に対して即興でメロディを弾くことです。
Cメジャースケールを例にとると、以下のイメージです。
キーはCで、コード進行はC→G→F→Cです。
キーがCなので、基本的にはCメジャースケールの『ドレミファソラシ』の音を使って、コードトーン(コードの構成音)のアボイドノートに気を払いながらアドリブ演奏します。
ざっくりとまとめると『キーやコードを主体にアドリブ演奏をする』ってな感じですかね(厳密には違うかも...)
これが一般的なアドリブ演奏の考え方です。
しかし、このやり方では演奏のバリエーションに限界があります。
というのも『キー』と『コード進行』という制限があるからです。
極端な話、上のコード進行に対して、100人の演奏者がそれぞれ別々にアドリブ演奏した場合、似たり寄ったりになってしまうということです。
そこで生まれたのがチャーチモードを使ってのアドリブ演奏なのです!
チャーチモードの実用 ① チャーチモードを使ってのアドリブ
それではチャーチモードを使ってのアドリブを見てみましょう!
チャーチモードを使ってのアドリブ演奏を具体的に説明すると、本来当てはまるべきコードスケール(チャーチモードのスケール)に、少し手を加えることをいいます。
まず先ほどの例をチャーチモードの視点から再確認します。
Cメジャースケールで、コード進行はC→G→F→Cです。
従ってコードスケール(チャーチモードのスケール)は、それぞれCアイオニアン、Gミクソリディアン、Fリディアン、Cアイオニアンとなります。
それではチャーチモードを使って手を加え、変化をつけてみます。
Gミクソリディアンスケールを、Gアイオニアンスケールに変更しました。
手を加えるとは、コードスケール(チャーチモードのスケール)のルート音は変えずに、チャーチモードのスケールの種類を変えることを意味しています。
今回の例では元のスケールがGミクソリディアンなので、変更後のスケールはミクソリディアン以外の6パターンが考えられるというわけです。
(ただし、曲調に相応しいかどうかは別の話です!この辺りは別の項目にて説明します)
元のスケール |
変更後のスケール候補 |
Gミクソリディアン |
Gアイオニアン |
Gドリアン |
|
Gフリジアン |
|
Gリディアン |
|
Gエオリアン |
|
Gロクリアン |
では、コードスケール(チャーチモード)を変更することによってどういう効果が得られるのか、という点について説明します。
結論からいいますと、元のメジャースケールになかった音が使えるようになるのです!
Gミクソリディアンスケール(Cメジャースケール)と、変更後のスケールのGアイオニアンスケールの構成音を見比べて見ましょう。
-
Gミクソリディアンスケール(Cメジャースケール:『ソラシドレミファ』
-
Gアイオニアンスケール:『ソラシドレミ ファ# 』
ご覧の通り、GアイオニアンスケールにはGミクソリディアンスケール(Cメジャースケール)にないF#音が含まれています!
つまり、GミクソリディアンスケールをGアイオニアンスケールに変更することにより、F#の音が使えるようになるのです!
このようにコードスケール(チャーチモードのスケール)を変更することによって、使える音を増やすことができます。
これは結果として、アドリブ演奏のバリエーションが増えたことになるのです。
実際の演奏のイメージは上の画像のような感じです。
スケールを変更しないCコード、Fコード、に関しては、一般的なアドリブ演奏と同様です。
元のメジャースケールの音を使って演奏します。
コードスケール(チャーチモードのスケール)は意識しません。
一方、スケールを変更したGアイオニアンスケールの部分は特別な意識が必要です。
特に元のスケールにない音、つまり今回の例でいう所のF#音を意識(中心に)しつつ、アドリブ演奏します。
一般的なアドリブ演奏の考え方を『キーやコードを主体にアドリブ演奏をする』とするなら、チャーチモードを使ってのアドリブ演奏は『メロディ(旋律)主体でアドリブ演奏をする』ってな感じです(厳密には違うかも...)
前の話に戻りますが、一般的なアドリブ演奏の考え方では、コードやキーの制限によりバリエーションに限界があります。
しかし、チャーチモードを使ってのアドリブ演奏だと、コードやキーの制限が緩和されたことにより、アドリブ演奏のバリエーションを増やすことができるのです。
チャーチモードを使ったアドリブの理論的な解釈
前項でGミクソリディアンをGアイオニアンに変更しましたが、その点を深掘りしてみましょう。
CキーとGキーのダイアトニックコード(三和音)と、コードスケール(チャーチモードのスケール)を表にしました。
Cメジャースケール |
||
ディグリー ネーム |
ダイアトニックコード(三和音) |
コードスケール(チャーチモードのスケール) |
Ⅰ |
C |
Cアイオニアン |
Ⅱm |
Dm |
Dドリアン |
Ⅲm |
Em |
Eフリジアン |
Ⅳ |
F |
Fリディアン |
Ⅴ |
G |
Gミクソリディアン |
Ⅵm |
Am |
Aエオリアン |
Ⅶm(♭5) |
Bm(♭5) |
Bロクリアン |
Gメジャースケール |
||
ディグリー ネーム |
ダイアトニックコード(三和音) |
コードスケール(チャーチモードのスケール) |
Ⅰ |
G |
Gアイオニアン |
Ⅱ |
Am |
Aドリアン |
Ⅲ |
Bm |
Bフリジアン |
Ⅳ |
C |
Cリディアン |
Ⅴ |
D |
Dミクソリディアン |
Ⅵ |
Em |
Eエオリアン |
Ⅶ |
F#m(♭5) |
F#ロクリアン |
それぞれの表のGコードに対応するスケールを見てください。
CキーでGコードはミクソリディアンスケールですが、Gコードではアイオニアンスケールになっています。
前項のGコードのミクソリディアンスケール→アイオニアンスケールの変更はここに由来しています。
CキーでGコードはディグリーネームに置き換えると Ⅴ になります。
GキーでGコードはディグリーネームに置き換えると Ⅰ になります。
つまり元々Cキーですが、Gコードの部分だけGキーの Ⅰ と解釈して、アイオニアンスケールに変更しているのです。
実践的なチャーチモードを使ってのアドリブ演奏や作曲などでは、『本来はこのキーだけど、解釈によってはこのキーにも捉えられる』と考えるのです。
あえて調性の壁を突破!ジャズの自由な世界!
モードスケールは全てのコードに対応しているわけではありません。
その理由としては、元のコードに合わない、元のキーの調性を崩してしまう、というのは先ほど話した通りです。
しかしながらジャズの世界ではその辺りがすごく曖昧になっています。
具体的に見てみましょう。
これはアントニオ・カルロス・ジョビン作曲の波(ウェイブ)という曲のイントロ部分の引用です。
キーはC(原曲はDキー)で、いきなりCm7から始まっています。
本来であればCキーに対するCのつくダイアトニックコードはCかCmaj7で、使えるモードスケールはアイオニアンかリディアンです。
しかし、このイントロ部分は一説によるとドリアンスケールが使われていると言われています。
(ここからは私の個人的な解釈です。誤った解釈であったらすみません...)
Cm7の部分だけでは判断できません。フレーズが短すぎます。
本来のCメジャースケールでないことは確かですが、それ以外のスケールを考え出すと可能性は複数考えられます。
そこでDm7の部分を含めたイントロ全体を見てみましょう。
Cを基準音とするスケールを続いていると仮定して考えてみましょう。
使われている音はド、レ、ミ♭、ファ、ソ、ラ、シ♭です。
チャーチモードのスケールと見比べてみてください。
そのままCドリアンスケールの音の並びになっています!
このように視野を広げて見てみると、ドリアンスケールを使っていると解釈できるのです!
(と私は考えました。間違っていたらすみません。色々調べたのですが今の私にはこれが精一杯…汗)
しかしながら、私が調べた限りだとこのジョビンという方は、同主調のメジャーとマイナーのスケール(コード)(例:Cメジャースケール(コード)とCmスケール(コード))を織り交ぜて作曲するのが特徴の一つと言われています。
よって、単純にCキーのダイアトニックコードとCmキーのダイアトニックコードを組み合わせて使った結果、Cドリアンを使っていると解釈できる形のイントロになった、というのが真実かもしれないです笑
さて、調整の壁を突破!の話に戻します。
例に出した波(ウェイブ)の例のように、本来の調整音楽の観点でみれば、適切とはいえないような音作りでも、ジャズでは逆によかったりするのです!
適切とはいえないモードスケールの使用や、同主張のダイアトニックコードを織り交ぜての曲の構成は、ジャズの世界では特殊なことではありません。
普通に使われてます(むしろもう使い古されたと考える人もいるかも…)
あえて、決まっている枠組みから脱却し、より良い音楽を追求していく。
私はジャズのこの考え方というか、成り立ちや歴史というのが気に入っています。
現代社会に対するアンチテーゼって感じがする気がしませんか?
チャーチモードの副作用
いくつかの項目で述べたように、モードスケールの使用によってバリエーションを豊かできることは確かです。
さらにいえば、他のキーからコード(スケール)を借用したりすると、さらにバリエーションは増えます。
これは間違いなくいいことなのですが、反面悪影響があることも確かです。
話の中で何度か触れていますが、調性感がどうしても薄れてしまうんですね。
この話での調性感をざっくり説明すると、そのキー(スケール)が持つ主音を軸とした音の機能ことを指しています。
もう少し噛み砕いて説明しましょう。
例えばCキーだったら、ドの音が基準です。
シの音はドに対して導音で、進行感や解決感を生みます。
ソの音はドに対して5度上の音で、こちらも力強い進行感を生みます。
このようにドを基準にその他の音の機能が決められています。
しかし、調整音楽的に適切とはいえないモードスケールや、他のキーから借用してきたのコード(スケール)を曲中頻繁に使うと、元々決まっていた音の機能が薄められてしまうのです。
調性感が薄められた結果どうなるのかというと、曲調が曖昧になります。
メジャーキーともマイナーキーともいえない、ふわふわした感じに聞こえるのです。
実際ジャズはメジャーキーともマイナーキーともいえない、独特な曲調ですよね。
人間の耳は無意識ですが、実はこの辺りの音の感覚には非常に敏感なのです。
我々がジャズを聴くとジャズだと認識できるのは、この辺りが理由といえます。
チャーチモードの実用 ②
これまでとは全く対照的な実用例をご紹介します。
具体的にいうと、より調性をはっきりさせたい時にチャーチモードを意識して演奏、作曲する場合があります。
アドリブ演奏の話で少し触れましたが、調性音楽に従った楽曲では、アドリブ演奏や作曲をする際にモードスケールを意識することは少ないです。
つまり、画像のコード進行で言う所のCアイオニアン→Gミクソリディアン→Fリディアン→Cアイオニアンというスケールは考えずに、CキーのCメジャースケール(ドレミファソラシ)の音を使って演奏、作曲しています。
今回紹介するチャーチモードの実用は、あえてそれぞれのコードに対応したモードスケールを意識して演奏、作曲するといった使い方です。
例として、最初のCコード見てみましょう。
コードスケール(チャーチモードのスケール)はアイオニアンスケールです。
この場合、アイオニアンスケールの中のCの構成音(ドミソ)の音を中心に演奏、作曲します。
特に重要なのは、元のコード感(モードスケール感)を崩さないように気をつけることです!
具体的には以下のことに気をつけましょう!
ポイントは2つあります。
1点目はアボイドノートは避けるということです。
今回の例はCコードですから、構成音のミの音とアボイドノートのファの音は避けます。
2点目はベースとなるコード(今回の具体例ではCコード)と、構成音が似ているコードトーンは避けるということです。
例えばAm7コードはCコードと構成音が似ています。
コード名 |
構成音 |
Cコード |
ド ミ ソ |
Am7コード |
ラ ド ミ ソ |
二つのコードの違いはラの音があるか、ないかの違いです。
ラの音はCコードで言う所の6度(シックス)にあたる音ですが、あまり強調しすぎるとCコード感(アイオニアンスケール感)が薄れてしまいます。
Cmaj7コードも同様に、Cコードに構成音が似ています。
コード名 |
構成音 |
Cコード |
ド ミ ソ |
Cmaj7コード |
ド ミ ソ シ |
二つのコードの違いはシの音があるか、ないかの違いです。
こちらもあまり強調しすぎると、Cコード感(アイオニアンスケール感)が薄れてしまいます。
このように、もとのコード感(モードスケール感)が崩れないように注意しながら演奏、作曲をすることにより、より調性をはっきりさせることができるのです!
以上があえてモードスケールを意識した実用方法となっています!
とはいったものの、実際の所こういった意識のもと曲が作られたり、演奏される状況は限定的といえます
例えば映画やアニメなどサウンドトラックなどはあえてそれぞれのコードに対応したモードスケールを意識し、曲が作られることがあるそうです(くわしくは知らないです。ごめんなさい...気づいたことがあれば追記します…)
ソロギターでチャーチモードを考える ①
さてソロギターでチャーチモードを考えてみましょう!
個人的な意見で言わせてもらうと、チャーチモード的な発想はソロギターというジャンルと相性がいいように感じます。
特に相性がいいと感じる部分としては、アドリブで何かを演奏しなけらればならない時です。
突然『何でもいいから何か弾いて!』といわれたことは、ギターを弾いたことがある人なら何度か経験ありますよね?
そんな時にぱっと弾ける曲があればいいですが、これがなかなか難しい!
『楽譜がないと弾けない!』『緊張する!』『運指がわかんなくなっちゃった!』などなど…苦い経験は数知れず。
弾いたとしても知らない曲だったりするから悲しい所です…
私が考えたソロギターにおけるチャーチモードを使ったアドリブ演奏法を覚えれば、その辺を切り抜けることができます!(はず笑)
上の画像は私が適当に作ったエチュードです!
まずはキーを決めましょう!
この時注意しなければならないのは、そのキーの主音(ルート音)を5弦か6弦の解放弦で弾けるかどうかという点です。
というのも、私が考えるソロギターにおけるチャーチモードを使ったアドリブ演奏では、終始そのキーの主音(ルート音)をベース音とするからです。
画像の曲では、キーはAです。ベース音は5弦解放で弾いています。
つまり、スタンダードチューニングではAキーかEキーかの二択ということになります。
次にチャーチモードのスケールの流れを決めます。
上の画像ではアイオニアン→リディアン→アイオニアン→ミクソリディアンという流れになっています。
私の個人的な意見ですと、アイオニアン→その他のスケール→アイオニアンという感じに、アイオニアンとアイオニアンの間にその他のスケールを混ぜると、調整感がいい感じになる気がします。
あとは弾くだけです!
その際以下の二点だけ注意します。
-
アボイドノートに気を払って弾く
-
アイオニアンスケールやその他のスケールでも同様に、アボイドノートには気を払いましょう。人間の耳は不協和音には非常に敏感です。
-
アイオニアンスケール以外のスケールを弾く部分は、元のメジャースケールに出てこない音が、何度か出るように弾く
-
画像の例でいうと、アイオニアンスケール以外のスケールを弾く部分に該当するのは、二小節目と四小節目のリディアンスケールとミクソリディアンスケールです。
-
リディアンで該当する音はレ#です。
-
ミクソリディアンで該当する音はソです。
試しに画像の楽譜を弾いてみてください。
それなりに曲として成立していると感じると思います!
メジャースケールの音を覚えたり、指板におけるそれぞれのスケールの配置を把握したりなど、多少ハードルはあるかなと思いますが、慣れれば結構簡単に画像のような、それっぽい曲を弾くことができます!
ぜひ試してみてください!
まとめ
チャーチモード