スライド・グリッサンド

スライド・グリッサンドとは?

スライド・グリッサンドはソロギターで頻出のテクニックの1つです。その特徴的な音色によって、演奏にアクセントをつけることができます。またスライド・グリッサンドは右手ではなく、左手を使います。

このページでは、スライド・グリッサンドの概要、譜面上の表記、エチュードを使った練習、そして実際の楽曲(アメージンググレース)を演奏してみましょう。

なお以降の解説は右利き用ギターを想定して解説しており、左手で弦を押さえ、右手で弦を弾くものとします。

スライド・グリッサンドは指を「滑らせる」!

スライド・グリッサンドは弾いた弦が鳴っている状態で、弦を押さえている指を移動させて音を出す奏法のことです。 押弦した状態で指を移動させる必要があるため、弦上で指を滑らせるイメージが近いです。

スコア上ではスライドが『 s. 』、グリッサンドが『 gliss. 』あるいは『 g. 』と表記されていることが一般的です。

スライドとグリッサンドの違いを整理します。

両方ともに押弦している指を滑らせて音を出すという点で共通していますが、ソロギターにおいては、以下の方針で両者を区別する場合が多いです。

比較項目
スライド
グリッサンド
指を移動させる距離
短い
長い
指を移動させた後、
終点の音を弾くかどうか
弾かない
弾く
その他の特徴
始点・終点を明確に定めない場合がある

以上が多くの場合に当てはなる分類方法ですが、明確な区別はあまりないようです。音楽のジャンルや、スコアの書き手によって解釈が変わり、曖昧になってしまっているように感じます。

スライドは以下の流れで音を出します。

項番 手順
1

スライドの始点を押さえて弦を弾く

2

弾いた弦が鳴っている状態で、スライドの終点へ指を移動させる

一方グリッサンドは、スライドと途中まで同じですが、最後が違います。

項番 手順
1

グリッサンドの始点を押さえて弦を弾く

2

弾いた弦が鳴っている状態で、グリッサンドの終点へ指を移動させる

3

指が終点まで移動したら、終点を左手で押さえた状態で、右手で弦を弾く

スライド・グリッサンドに共通するコツは弦を押さえる指の力です。 指を移動させる時に、弦を押さえる力が緩まないように注意しましょう。 指を移動させようとすると、つい力が弱くなってしまいますが、スライド・グリッサンドがうまくいかない原因となりますので注意しましょう。

スライド・グリッサンドに共通する特徴として、動作の始点・終点が明確に定めない場合があります。 このパターンについては、エチュード1で触れたいと思います。

さっそく譜面通りに演奏してみましょう。

スライド

まずスライドから動作を確認していきましょう。

五線譜・TAB譜・ダイアグラム譜を見ると、2つの音を出すことが読み取れます。

※TAB譜の読み方はこちら、ダイアグラム譜の読み方はこちら

そして2つの音の間に、スライドを意味する『 s. 』が表記されていることも読み取れます。このように『 s. 』は2つの音符の間に表記されます。これらの表記の意図は、1つ目の音符の音が鳴っている状態で、2つ目の音符の音を目がけて指を移動させることを意味しています。

以上をまとめると、以下の表に整理されます。

項番

音の高さ

音の長さ

押さえる位置

押さえる指(左手)

弦を弾く指(右手)

1

C(ド)

8部音符

2弦1フレット

人差し指

中指

2

D(レ)

8部音符

2弦3フレット

人差し指

(1フレットから3フレットへスライド)

なし

動画を参考にして、スライドで音を出してみましょう。

動画の再生速度ですが、調節することができます!

PCでは、歯車マークの設定ボタンから調節可能です!

モバイルでは、専用のアプリを利用することで可能となります!

詳しくは こちら をご覧ください。

グリッサンド

今度はグリッサンドの動作を確認していきましょう。

スライドと同様に、2つの音を出すことが読み取れます。そして2つの音の間に、グリッサンドを意味する『 gliss. 』が表記されていることも読み取れます。このように『 gliss. 』は2つの音符の間に表記されます。これらの表記の意図は、1つ目の音符の音が鳴ってる状態で、2つ目の音符の音を目がけて指を移動させ、最後に終点の音を右手で鳴らすことを意味しています。

以上をまとめると、以下の表と図に整理されます。

項番

音の高さ

音の長さ

押さえる位置

押さえる指(左手)

弦を弾く指(右手)

1

C(ド)

8部音符

2弦1フレット

人差し指

中指

2

D(レ)

8部音符

2弦3フレット

人差し指

(1フレットから3フレットへスライド)

中指

(左手人差し指のスライド後)

動画を参考にして、グリッサンドで音を出してみましょう。

動画の再生速度ですが、調節することができます!

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このようにスライド・グリッサンドは、指を「滑らせて」音を出すテクニックです。

    スライド・グリッサンド練習

前項ではスライド・グリッサンドの動作確認として、ぞれぞれ1拍分を弾いてみましたが、今度はもう少し長く弾いてみましょう。

スライド・グリッサンドで『ドレミファソラシド』

スライド・グリッサンド練習として、『ドレミファソラシド』を鳴らしてみましょう。

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今回気をつけるべきポイントは、以下の1点です。

スライド・グリッサンド全体

スライド・グリッサンドはテンポに要注意です。

指を移動させようとすると、最初の音が短くなってしまい、テンポが乱れてしまうことが多々あります。それぞれの音の長さに注意しつつスライド・グリッサンドしましょう。

今回の楽曲のテンポは以下となります。

  • スライド:8部音符

  • グリッサンド:4部音符

音の長さを意識することで、テンポにヨレがない演奏ができるようになります。

スライド・グリッサンドのエチュード1

今度はエチュードを使ってスライド・グリッサンドを練習しましょう。

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今回気をつけるべきポイントは、以下の3点です。

1小節目 1拍目オモテ・1小節目 2拍目オモテ

TAB譜にもダイアグラム譜にも、スライドの始点が明示されていません。

このような表記パターンもあります。 このようなパターンの意図は、スライドの音が跳ね上がる上昇感を出すことです。 そのため聞いてみておかしくなければ、どこが始点でも良いです。

今回の場合は、両方とも5フレット辺りを始点としてスライドするとちょうど良いでしょう。

2小節目 1拍目オモテ〜2小節目 1拍目ウラ

グリッサンドの部分です。

1小節目4拍目ウラの2弦5フレットを弾いた後、中指を押さえたままにしておき、2小節1拍目オモテからウラに向かうタイミングでグリッサンドします。

2小節目 3拍目 三連符の1音目

スラッシュが入った小さな音符があります。

これは装飾音符です。 装飾音符は指定された音を、ごく短い間鳴らします。 そして装飾音符は拍数にカウントしません。

今回のパターンでは、2弦3フレットから5フレットまでのスライドにおける、始点に装飾音符が使われています。 つまり2弦3フレットを弾いた瞬間、即座にスライドを開始するという意図の表記です。

スライド・グリッサンド実践

いよいよスライド・グリッサンドを使った実際の楽曲を演奏してみましょう。 基本のアルペジオと、今回学んだスライド・グリッサンドが登場します。

『アメージンググレース』を弾く!

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チューニングはDrop Dです。

ここではスライド・グリッサンドを中心として、演奏する上でのポイントを取り上げます。

なお今回のアレンジは、私が以前作成したアメージンググレースの内容を、スライド・グリッサンドのエチュード用にリアレンジしたものとなっております。そのため元バージョンの内容と一部異なっている点がありますので、ご了承ください。

全体解説

楽曲全体にスライド・グリッサンドをふんだんに盛り込んだアレンジになっています。

今回のアレンジは17小節構成となりましたが、その内、スライド・グリッサンドは合わせて10箇所で取り入れました。また今回のエチュードでは、中指と薬指を使ってスライド・グリッサンドを行います。

1小節目 弱起

この楽曲は3拍子ですが、1小節目には1拍分しかありません。

これは弱起と呼ばれ、第1拍目以外から演奏を開始することを意味しています。今回の場合は3拍目から開始するイメージです。「イチ、ニ」と数えてから弾き始めると、スムーズに演奏を開始できるかと思います。

1小節目1拍目〜2小節目1拍目

グリッサンドが使われています。

前項で取り上げた弱起の3弦2フレットA音を1拍分弾いた後、押さえた指の力を緩めずに弦の上を滑らせ、3弦7フレットまで移動させます。そしてグリッサンドですから、指を移動させた後、2小節目1拍目として3弦7フレットD音を弾きます。このD音は、伴奏音の6弦解放D音と同時のタイミングで鳴らします。 意識して拍を合わせないとズレてしまいますので、注意しましょう。

2小節目3拍目 三連符の1音目

2弦5フレットE音から2弦7フレットF音へスライドが使われています。

2弦5フレットE音は装飾音符ですから、拍数にカウントしません。 今回の場合は、2弦7フレットF音が3拍目の頭に来るようにスライドさせましょう。 つまり弾くタイミングとしては、2弦7フレットF音を弾く直前に2弦5フレットE音を弾くということになります。 またスライドですから、移動させた後は弦を弾きません。

なおこのパターンは以下の箇所にも登場します。

  • 6小節目3拍目 3連符の1音目

  • 10小節目3拍目 3連符の1音目

  • 14小節目3拍目 3連符の1音目

3小節目3拍目オモテ〜3拍目ウラ

スライドが使われています。

3拍目オモテは中指で2弦7フレットF音を押さえて弾きます。その後3拍目ウラに2弦5フレットE音が鳴るように、スライドします。今回もスライドですから、移動させた後は弦を弾きません。

なお今回のパターンも以下の箇所に登場します。ここと同じように演奏してください。

  • 11小節目3拍目オモテ〜11小節目3拍目ウラ

5小節目3拍目オモテ〜4小節目1拍目オモテ

グリッサンドが使われています。

動作的には1小節目1拍目〜2小節目1拍目と同じですね。3弦2フレットA音を鳴らした後、7フレットまで指を移動させ、最後に7フレットD音を弾きます。

ここではグリッサンドの開始点と終了点で出す音と、伴奏音を鳴らすタイミングを合わせることに注意しましょう。

  • 開始点:3弦2フレットA音と6弦解放D音

  • 終了点:3弦7フレットD音と6弦解放D音

このパターンも別の場所で登場します。

  • 13小節目3拍目〜14小節目1拍目

7小節目3拍目オモテ〜7小節目3拍目ウラ

2弦5フレットを開始点として、2弦7フレットまで中指をスライドさせます。動作的には3小節目3拍目オモテ〜3拍目ウラの逆というイメージでしょうか。

ここではスライドだけでなく、テンポにも意識を向けましょう。 具体的には、以下のポイントをしっかり守れば、ヨレのないテンポで上手に演奏できます。

  • 3拍目オモテ:2弦5フレットE音を鳴らす

  • 3拍目ウラ:2弦7フレットF音が鳴るようにスライドさせる